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2007年8月19日 (日)

ヤンヤン夏の想い出

監督:エドワード・ヤン(楊徳昌)
出演:呉念真 エレン・ジン イッセー尾形 
2000台湾・日本

 6月29日、台湾の監督エドワード・ヤン(楊徳昌)が亡くなりました。1947年生まれ、まだ59歳でしたが、ガンで7年間の闘病ののちの死でした。生涯に残した映画は7本のみ。しかし、そのどれもがきわめて鮮烈で鋭い感覚に貫かれた、完成度の高い作品でした。最初の映画『海辺の一日(海灘的一天)』(83)でヒューストン映画祭のグランプリを取り、その後の『台北ストーリー(青梅竹馬)』(85)、『恐怖分子』(86)、『牯嶺街少年殺人事件』(91)『エドワード・ヤンの恋愛時代(独立時代)』(94)『カップルズ(麻将)』(96)と、どれも台湾の現代人の心理とか、社会とか、抱えた問題などを鋭く切り取り、印象的に残る作品です。なかでも私の印象に強く残っているのは、『牯嶺街少年殺人事件』。1960年代の台北を舞台に、外省人の一家の他所者的な不安に満ちた生活、その中で14歳の息子が同学の少女に淡い恋をし、最後に彼女を刺し殺してしまうまでのいきさつが、静かな静かな画面の中で高まっていく緊張とともに描かれます。最初と、少年が刑務所に送られてしまった後の最後にラジオから台北大学の合格者の氏名が流され、少年や一家が切望して得られなかったものを象徴するようなこの場面は身につまされるものでした。この少年を演じたのは『百年恋歌』に主演している張震で、父と兄も彼の実の父(張国柱)兄が演じています。また友人役の柯宇綸は張震とともに、その後の『カップルズ』にも主演し、『百年恋歌』にも60年代のビリヤード場の客として友情出演していました。今回ご紹介する『ヤンヤン・・』でも、向かいの高校生リリの新しい恋人役として、ちょっとだけ出ています。二枚目タイプではないのですが、なんか存在感のあるバイプレーヤーです。
 台湾に戦後渡ってきた外省人の家族を描いた映画では侯孝賢の『童年往事』(85)という作品も心に残っています。楊徳昌と侯孝賢、ほぼ同年で、ともに80年代から、台湾のインディペンデント系の映画を支え牽引してきた監督なのですが、張震や柯宇綸を共通して使うというだけでなく、実は楊監督は、侯孝賢の『冬冬の夏休み(冬冬的夏暇)』(84)に主人公の冬冬の父親役として出演しています。また、楊徳昌の『カップルズ』、それに『ヤンヤン・・』の父親NJ役を演じているのは侯孝賢の名脚本家、呉念真です。まあ、狭い狭い台湾映画界といってしまえばそれまでですが、このあたりも興味深いところです。

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 さて、今回ご紹介する『ヤンヤン夏の想い出』(00)は楊監督の早すぎる遺作になってしまいました。台北に住む一家、コンピュータ会社を経営する父、会社員の母、高校生の姉、8歳のヤンヤン、そして祖母。母の弟アディ(阿弟)の結婚式の日、彼の元彼女が結婚式になぐり込みをかけ、父は偶然に初恋の人と再会する。祖母は脳卒中で倒れます。母も、姉もそれぞれに悩みや鬱屈をかかえ、家族は昏睡状態の陥った祖母の枕元でこもごも悩みを語る。それを結構冷静な、透徹した目で見つめるヤンヤンの視線がいわばこの映画の語り手だといえるでしょう。そのヤンヤンにも幼い恋が芽生えます。経済的にも社会的にも恵まれた一家の人々の生きる難しさが描かれますが、それにも関わらず祖母と、そして幼いヤンヤンの視点がその人生に解決や救いをもたらす可能性として描かれています。比較的遠くにひいたカメラの長回しが特徴的ですが、その落ち着いた美しさも印象的です。2000年カンヌ映画祭監督賞を受賞作品。
 この映画は最初日本の岩井俊二、香港のスタンリー・クァンとで行われた共同企画のオムニバス映画の1本として企画されたようです。この共同企画自体は流れましたが、『ヤンヤン・・』はそういうわけで日・台合作となり、また岩井俊二はこのときの企画をもとに『リリィシュシュのすべて』(01)を作ることになったようです。イッセイ尾形が日本人大田の役で出演、味のある演技を見せています。ことばも普通話のほかに台湾語、英語が飛び交います。

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